動作はなぜ破綻するのか ― 大腿骨頸部骨折「起き上がり障害」をシステムで再建する ―2506PT

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月1回の理学療法セミナー。社内外の医療・介護従事者の学びの場として公開しています。

今回のセミナー情報

講義タイトル 動作はなぜ破綻するのか
― 大腿骨頸部骨折「起き上がり障害」をシステムで再建する ―
講師 理学療法士 Mr.T
開催形式 WEBセミナー

講義目次

講義内容

① 大腿骨頸部骨折における起き上がり動作障害の全体像 なぜ起き上がれなくなるのか

◆ 起き上がりは「統合動作」である

大腿骨頸部骨折の患者さんでは、「まず起き上がれない」 という場面が非常に多い。

起き上がりは、筋力だけの問題ではなく、複数機能の 統合動作 として成立する。

◆ 起き上がれない理由は1つではない

起き上がり動作には、次の要素が関与する。

痛み 動作の抑制と回避を生む

可動域 物理的に動作が成立しない

筋力 出力不足で支持が崩れる

運動制御 動作の組み立て(質)が破綻する

どれかが破綻すれば、同じように 「起き上がれない」 という結果になる。

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◆ 「できない」は評価のスタート地点

よくある思考は「起き上がれない → 筋力が弱い → 筋トレ」になりやすい。

しかし実際には、痛み可動域運動制御など、原因が全く違うことが多い。

➡ 「できない」は結論ではなく、評価の入口

◆ この疾患に特有の問題構造

大腿骨頸部骨折では、次が重なりやすい。

疼痛 術創部周囲の痛み・滑走不全

拘縮 股関節・体幹・胸郭の可動域制限

筋力低下 下肢・体幹・上肢の出力不足

臥床 動作プログラムの破綻

◆ 動作は「システム」で見る

起き上がりは、体幹・骨盤・下肢・上肢が連動する 運動連鎖

どこか1か所が止まると、全体が破綻する。

◆ 起き上がりはリハビリの出発点

起き上がりは 抗重力活動のスタート であり、ADL再建の最初の関門

➡ 起き上がりを論理的に再建できるかで、その後のリハビリ効率は大きく変わる

◆ この章の要点

多因子 起き上がり障害は単一原因ではない

構造 現象ではなく破綻部位を読む

逆算 動作から評価と介入を設計する

➡ まとめ:起き上がり障害は「筋力の問題」ではなく「動作システムの破綻」として捉える

※資料:動作能力レベルの段階図

② 動作再建を導くアルゴリズム型臨床推論の基本設計 なぜ「アルゴリズム思考」が必要なのか

◆ 評価と介入を「再現可能」にする

臨床では「何となく評価する」「経験則で介入する」場面が少なくない。

その結果、再現性がない結果がばらつく という問題が起こる。

◆ アルゴリズムとは何か

アルゴリズムとは、誰が評価しても同じ結論に近づける 思考手順のこと。

動作リハビリでは、「できない動作」から出発して、原因を段階的に切り分け、介入点を特定するための道筋になる。

◆ 動作から逆算する評価構造

本資料の基本はシンプルで、「できる/できない」を起点に、なぜできないかを 順序立てて 確認する。

評価は原則として、次の順で進める。

痛み 動作の抑制要因の有無

可動域 物理的に成立するか

筋力 支持・推進に足りるか

運動制御 動作の組み立て(質)

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◆ この順番が重要な理由

順番を崩すと、評価が迷走し、無効な介入が増える。

たとえば痛みや可動域の問題を残したまま筋力や動作練習をしても、動作は成立しない

➡ まとめ:アルゴリズム思考は「評価の迷い」を減らし、介入を最短ルートにする

※資料:評価フローチャート図

③ 起き上がり動作のフェーズ分解と臨床的意味づけ 起き上がりは「一連の動作」ではなく「段階的プロセス」

◆ 起き上がりは一つの動作ではない

起き上がりは、一気に起きる単一動作ではなく、複数フェーズの連続で構成されている。

そのため、どこか一部分で止まれば、全体として 「起き上がれない」 という結果になる。

◆ フェーズ分解の基本的な考え方

本資料では、起き上がりを大きく 第1相第2相 に分けて考える。

この分解により、「どこで止まっているか」「どこが問題か」を 具体的に 捉えられる。

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◆ フェーズ分解の臨床的メリット

フェーズを分けることで、評価は「起き上がれない」という曖昧な情報から、 評価可能な問題 に変換される。

その結果、介入ポイントも 明確 になる。

➡ まとめ:フェーズ分解は、起き上がり障害を「評価できる問題」に変える

※資料:起き上がり動作フェーズ図

④ 第一層(寝返り〜肘支持)における機能要件の整理 起き上がり前半で何が起きているか

◆ 第一層は「回旋と支持」のフェーズ

第一層は、寝返りから側臥位、そして 肘支持(on elbow) までの過程を指す。

この段階では、体幹回旋と支持基底面の形成が 動作成立の鍵 になる。

◆ 第一層で必要な要素

回旋 体幹と骨盤が連動して回れるか

荷重 下肢の重さを利用できるか

支持 肘で身体を支えられるか

◆ 第一層で破綻しやすい要因

この段階で止まる場合、次の要因が多い。

痛み 動かすこと自体ができない

可動域 股関節・胸郭・体幹の制限

連動 体幹と下肢の協調が崩れている

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◆ 評価の基本視点

評価では、まず 痛み可動域 を確認し、そのうえで最小限の支持能力をチェックする。

➡ まとめ:第一層は「回旋と支持」が成立するかどうかが鍵になる

※資料:起き上がり第1相の模式図

⑤ 第二層(肘支持〜座位)における機能要件の整理 支持基底面の変化と重心制御

◆ 第二層は「押し上げと安定化」のフェーズ

第二層は、肘支持(on elbow) から上肢を伸ばし、座位へ移行 する過程を指す。

この段階では、支持基底面が急激に変化し、同時に重心が 上方へ移動 する。

◆ 第二層で必要な能力

支持力 上肢で体重を支えられるか

安定性 体幹を安定して保てるか

制御 重心移動をコントロールできるか

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◆ 第二層で破綻しやすいポイント

痛み 上肢や股関節の疼痛で押せない

筋力 上肢・体幹の支持力不足

タイミング 押す方向と重心移動がずれる

◆ 評価の基本視点

評価では、上肢支持能力と体幹の 安定性、そして重心移動の コントロール を確認する。

➡ まとめ:第二層は「支持基底面の変化」に適応できるかがポイント

※資料:起き上がり第2相の模式図

⑥ 動作不能時に最初に確認すべき「痛み」の臨床的位置づけ 評価の出発点としての疼痛

◆ なぜ最初に「痛み」を確認するのか

動作ができないとき、最初に確認すべきは痛み

痛みがある状態では、筋力・可動域・動作の評価は 信頼性が落ちる

◆ 痛みは「抑制システム」として働く

出力低下 筋活動が抑制される

回避行動 動作そのものを避ける

代償 不適切な動作パターンが増える

つまり、痛みがある状態では 正しい動作評価はできない

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◆ 評価の基本的な考え方

まず確認するのは、

有無 動作時痛があるか

局面 どのタイミングで痛いか

➡ まとめ:痛みは「最初に切り分けるべき前提条件」である

※資料:評価アルゴリズム分岐図

⑦ 術後疼痛の主要因としての疎性結合組織制限 「骨が原因ではない痛み」をどう捉えるか

◆ 術後の痛みの多くは「骨」ではない

術後の痛みというと、骨折部やインプラントを想像しやすい。

しかし臨床では、痛みの主因は 疎性結合組織の滑走不全 であることが多い。

◆ 疎性結合組織とは何か

筋・皮膚・神経・筋膜の間に存在する、滑走のための組織

ここが硬くなると、動作のたびに引っかかり、それが 痛みとして知覚 される。

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◆ 臨床での典型パターン

画像正常 レントゲン上は問題がない

動作時痛 動かしたときだけ強く痛む

局所制限 特定方向で引っかかる

こういう場合、まず疑うべきは 軟部組織の滑走障害

➡ まとめ:術後疼痛の多くは「骨」ではなく「疎性結合組織の滑走不全」が原因になる

※資料:疎性結合組織の模式図

⑧ 疎性結合組織制限が運動連鎖に与える影響 「一部の滑走不全」が動作全体を壊す理由

◆ なぜ一部の制限が全体を止めるのか

起き上がり動作は、体幹・骨盤・下肢・上肢が連動する 運動連鎖

その途中のどこか一か所で滑走が止まれば、力の伝達はそこで途切れる

◆ よくある臨床パターン

股関節 周囲が固く体幹が回らない

胸郭 が動かず上体が起こせない

皮下組織 の滑走不全で動作が引っかかる

問題は「そこが動かない」ことではなく、そこから先に力が伝わらない ことにある。

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◆ 見るべき評価視点

大切なのは、

非可動 どこが動かないか

遮断点 どこで力が途切れているか

特に後者の視点が、介入ポイントの特定 に直結する。

➡ まとめ:疎性結合組織の滑走不全は、動作全体を止める「見えないブレーキ」になる

※資料:組織滑走障害による運動連鎖遮断の模式図

⑨ 痛みがある場合の介入戦略の原則設計 「安静」ではなく「制御された運動」へ

◆ 原則は「動かしながら取る」

術後の痛みに対して、「安静にして様子を見る」という選択は一見安全に見える。

しかし実際には、動かさないこと自体が滑走不全を固定化 させる。

◆ 介入の本当の目的

この段階の目的は、筋力をつけることではない。

目的はあくまで、疎性結合組織の滑走を取り戻すこと

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◆ 実際の介入の考え方

使うのは、

自動運動 患者自身の動き

軽介助 ごく小さな誘導

小可動域 痛みの出ない範囲

これらを使って、「動かせる範囲」を少しずつ拡張 していく。

➡ まとめ:痛みへの介入は「筋トレ」ではなく「動作再開の準備」である

※資料:軟部組織モビライゼーションの実施例

⑩ 痛み消失後も動作が出ない場合の次段階評価 ここからが「本当の機能評価」

◆ 「痛みがないのに動けない」という状態

痛みは取れている。

それでも起き上がれない場合、問題は別の階層 に移っている。

◆ ここで初めて次の評価ステップへ進む

この段階でようやく、

可動域 関節が物理的に動くか

筋力 支持と推進に足りるか

という評価に進む。

◆ 評価の順番は変えない

ここでも評価の順番は同じ。

可動域 動作が成立する前提条件

筋力 支える力・動かす力

動作制御 使い方とタイミング

◆ この順番が崩れると起きること

順番を飛ばすと、

迷走 評価の焦点が定まらない

遠回り 無駄な介入が増える

➡ まとめ:痛みが消えてから、ようやく「本当の機能評価」が始まる

※資料:評価手順フローチャート

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最後までご観覧いただき、ありがとうございました。

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今後も定期的に最新のセミナーレポートを公開してまいります。