大腿骨近位部骨折リハビリテーションの構造化アプローチ   ― 評価から介入までをつなぐ臨床思考プロセス ―2505PT

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月1回の理学療法セミナー。社内外の医療・介護従事者の学びの場として公開しています。

今回のセミナー情報

講義タイトル 大腿骨近位部骨折リハビリテーションの構造化アプローチ
― 評価から介入までをつなぐ臨床思考プロセス ―
講師 理学療法士 Mr.T
開催形式 WEBセミナー

講義目次

講義内容

① 大腿骨頸部骨折の臨床的位置づけ 高齢者リハビリにおける分岐点となる外傷

◆ なぜ「頸部骨折」は臨床で特別扱いされるのか

大腿骨頸部骨折は、単なる骨折ではなく、生活レベルを大きく下げる外傷です。

この骨折をきっかけに、歩行能力低下・活動量低下・要介護化へ一気に進むケースが少なくありません。

◆ 問題は「骨」ではなく「動けなくなること」

臨床で本当に問題なのは、骨折そのものではなく「動けなくなること」です。

安静 不動化が続くと活動量が落ちやすい

疼痛 痛みで荷重や動作が減りやすい

侵襲 手術侵襲で体力が落ちやすい

結果として、筋力低下バランス低下廃用が短期間で進行します。

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◆ 「元に戻す」だけでは再転倒を防げない

骨折前に戻すだけでは、再転倒・再骨折を防げません。

歩行 生活場面で使える歩行へ再構築する

バランス 立て直しや方向転換を含めて再学習する

活動量 維持できる強度と習慣へ底上げする

➡ 大腿骨頸部骨折は「骨の問題」ではなく「生活の問題」

② 転倒リスクの病態生理 転倒は「偶然」ではない

◆ 転倒は「複合要因の結果」として起きる

高齢者の転倒は、身体機能の複合的低下の結果です。

筋力・感覚・バランス・反応のどれが欠けても、転倒リスクは一気に上がります。

筋力 支持性が落ちて踏ん張れない

感覚 足底や深部感覚が不確かで立て直しが遅れる

バランス 重心移動に対する制御が弱い

反応 つまずきへの反応が間に合わない

◆ 「一歩目」と「立て直し」がポイント

特に重要なのは、一歩目の踏み出しと立て直しです。

踏み出しが遅れる、立て直せない、という場面が転倒につながります。

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◆ 股関節周囲筋の「弱い+遅い」を見逃さない

背景には、股関節周囲筋の弱さと出力タイミングの遅れがあります。

中殿筋 片脚支持での安定性に直結する

大殿筋 立ち上がりや立て直しの出力源になる

腸腰筋 一歩目の振り出しとクリアランスに関わる

◆ 感覚と注意機能も転倒を押し上げる

深部感覚や注意配分の低下があると、環境変化で一気に不安定になります。

方向転換や二重課題でふらつきが増える人は、リスクとして捉えます。

➡ 転倒は「環境」より「身体システム」の問題として評価する

③ 骨粗鬆症の構造的理解 骨は「折れやすい構造」になっている

◆ 骨粗鬆症は「骨密度」だけの問題ではない

骨粗鬆症では、骨密度の低下だけでなく、骨の中身の構造そのものが弱くなっています。

そのため、見た目の衝撃が小さくても骨折につながりやすい状態になります。

骨密度 量としての骨が減っている

骨構造 支え合う骨梁のネットワークが壊れている

◆ 「弱っているから折れる」という視点

高齢者の骨折は、「強く打ったから折れた」というより、「弱っているところに負荷がかかった」結果として起こります。

つまり、転倒そのものよりも、骨の受け止める側の問題が大きいケースが多いということです。

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◆ 臨床での意味づけ

骨粗鬆症があるという前提では、「転倒=骨折」になりやすいことを常に意識する必要があります。

そのため、筋力やバランスの改善だけでなく、「転ばせない」視点がより重要になります。

➡ 骨粗鬆症は「折れやすい体の土台」ができている状態

※資料:骨梁構造の模式図

④ 関節包内外骨折の決定的差異 ここで治療戦略が大きく変わる

◆ 関節包「内」か「外」かで意味が変わる

大腿骨頸部骨折は、関節包の内側か外側かで、骨折の意味がまったく変わります。

この違いは、治療方針と予後に直結する重要なポイントです。

関節包内 骨頭への血流が障害されやすい

関節包外 血流は保たれやすく骨癒合が期待できる

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◆ 関節包内骨折が「厄介」な理由

関節包内では、骨頭へ向かう血流が骨折によって遮断されやすくなります。

その結果、骨癒合不全や骨頭壊死のリスクが高くなります。

◆ 治療方針への影響

関節包内骨折では、「くっつける」より「置き換える」選択がされやすくなります。

一方、関節包外骨折では、骨接合による治療が選択されることが多くなります。

➡ 関節包内外の違いは「手術方法と予後」を左右する分岐点

※資料:関節包内外の位置関係図

⑤ 大腿骨近位部骨折の解剖学的分類 まず「どこを折っているか」を整理する

◆ 大腿骨近位部骨折は大きく3つに分かれる

大腿骨近位部骨折は、解剖学的に骨折部位で分類されます。

骨頭 関節そのものを構成する部分

頸部 骨頭と骨幹部をつなぐ部分

転子部 大腿骨近位の外側に張り出す部分

◆ 分類は「名前」ではなく「方針」を決めるためにある

この部位の違いによって、治療方法やリハビリの考え方が大きく変わります。

どこを折っているかを正確に把握することが、臨床のスタートラインになります。

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◆ リハビリ視点での意味

骨折部位によって、荷重の考え方や注意点は変わります。

そのため、「頸部骨折」と一括りにせず、必ず部位まで意識して評価します。

➡ 分類は「治療とリハビリの設計図」を決めるためにある

※資料:骨折部位の分類図

⑥ Garden分類による頸部骨折評価 転位の有無が予後を左右する

◆ Garden分類は「転位の程度」を見る分類

Garden分類は、頸部骨折を転位の程度によって段階的に分類する指標です。

臨床では、「転位があるかどうか」が最も重要な判断ポイントになります。

非転位 骨頭の位置関係が比較的保たれている

転位あり 骨頭の位置がずれている

◆ 転位があると何が問題になるか

転位が生じると、骨頭へ向かう血流が障害されやすくなります。

その結果、骨癒合不全や骨頭壊死のリスクが一気に高くなります。

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◆ 治療方針への影響

高齢者で転位がある場合、多くは骨接合ではなく人工骨頭置換術が選択されます。

これは、「くっつくかどうか」より「早く安全に動けるか」を優先する判断です。

➡ Garden分類は「保存か置換か」を考えるための重要な判断材料

※資料:Garden分類ステージ図

⑦ Evans分類による転子部骨折評価 「安定型か不安定型か」が治療とリハビリを分ける

◆ Evans分類は「安定性」を見る分類

Evans分類は、転子部骨折を「安定型」と「不安定型」に分けて考える分類です。

ここでいう安定性とは、「荷重をかけたときにズレにくい構造かどうか」という意味です。

安定型 骨片のかみ合わせが比較的保たれている

不安定型 荷重で転位しやすい構造になっている

◆ 不安定型で何が問題になるか

不安定型では、立位や歩行で骨折部が潰れたり、ズレたりしやすくなります。

そのため、内固定が破綻するリスクも高くなります。

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◆ リハビリへの影響

Evans分類の評価は、荷重開始時期や負荷量の設定に直結します。

不安定型の場合は、「動かすこと」より「守りながら使う」視点が重要になります。

➡ Evans分類は「どこまで攻めていいか」を判断するための指標

※資料:Evans分類の安定性分類図

⑧ 手術戦略の二分法 「くっつける」か「置き換える」か

◆ 選択肢は大きく2つしかない

大腿骨近位部骨折の手術は、大きく分けると「骨接合術」と「人工骨頭置換術」の2つに集約されます。

つまり、「自分の骨をくっつけるか」「人工物に置き換えるか」の選択です。

◆ 判断基準は「血流」と「癒合の見込み」

どちらを選ぶかは、骨頭への血流が保たれているか、骨癒合が期待できるかで決まります。

関節包内で転位がある場合は、骨癒合よりも早期離床を優先して置換術が選ばれることが多くなります。

◆ リハビリ視点での意味

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術式の違いは、荷重開始時期や注意点にそのまま影響します。

まず「この人はどちらの手術か」を正確に把握することが、リハビリ設計の出発点になります。

➡ 手術戦略の違いは「どこまで動かしてよいか」を決める前提条件

⑨ 人工骨頭置換術の構造理解 何がどう置き換わっているのか

◆ 人工骨頭置換術で起きていること

人工骨頭置換術では、骨折した骨頭の部分が人工物に置き換えられます。

自分の骨を「くっつける」のではなく、「使える形に置き換える」手術です。

◆ メリットと前提条件

除痛 痛みの原因そのものを取り除ける

早期荷重 骨癒合を待たずに立位・歩行に進める

そのため、高齢者では早期離床を優先して選択されることが多くなります。

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◆ リハビリで注意すべき点

一方で、人工関節には脱臼という特有のリスクが生まれます。

そのため、可動域や動作指導には「どのアプローチか」を踏まえた配慮が必要になります。

➡ 人工骨頭は「治す」手術ではなく「使える状態に置き換える」手術

※資料:人工骨頭置換術の模式図

⑩ 骨接合術の構造理解 「くっつくまで守りながら使う」手術

◆ 骨接合術で何をしているか

骨接合術は、骨折した骨をスクリューやプレート、髄内釘などで固定し、自分の骨がくっつくのを待つ治療です。

人工物に置き換えるのではなく、「元の構造を保ったまま治す」ことを目的にします。

◆ メリットと前提条件

温存 自分の骨・関節をそのまま残せる

前提 骨癒合が見込める状態であること

若年者や、転位が少なく血流が保たれているケースで選択されやすくなります。

◆ リハビリで注意すべき点

骨癒合が完成するまでは、荷重制限や動作制限が必要になることが多くなります。

「動かせる=治っている」ではない点を、常に意識して介入する必要があります。

➡ 骨接合術は「治るまでの管理」がリハビリ成否を左右する

※資料:骨接合材料と固定方法の模式図

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ALSOKケアプラスのセミナー活動が、皆さまの学びと現場の支援に少しでもお役立ていただけましたら幸いです。
今後も定期的に最新のセミナーレポートを公開してまいります。