触れる前に知っておきたい脳梗塞の真実_MPA202606

原始反射から紐解く、迷わない姿勢保持アプローチ

 

MPAセミナーブログ Vol.042

触れる前に知っておきたい脳梗塞の真実

原始反射から紐解く、迷わない姿勢保持アプローチ

目次
  1. 問題定義:良かれと思って揉んだのに、なぜ悪化するのか
  2. 原因:脳の仕組みと「原始反射」を知らないと起きること
  3. 対策:今日から実践できる4つのポイント
  4. まとめ:本講義の重要ポイント3
  5. 学びの振り返りメモ
  6. チェック練習表
  7. 目標再確認シート

高齢者のご利用者様を多く担当されている先生であれば、脳血管疾患による麻痺のある方に施術する機会は必ずあります。「一生懸命揉んだのに、かえって手が硬くなった」「反対側まで緊張が強くなった」という経験はありませんか。それは技術不足ではなく、脳の仕組みを知らないまま触れてしまったことが原因かもしれません。今回は、迷わず、自信を持って施術できるようになるための基礎知識を、順序立てて整理します。

1.問題定義:良かれと思って揉んだのに、なぜ悪化するのか

訪問マッサージの現場では、次のようなお悩みをよく耳にします。

起きていること 先生の声
揉んだ手が硬くなる 柔らかくしたはずなのに、施術後にぎゅっと握られてしまう
反対側まで緊張する 片方をほぐしたら、もう片方が硬くなってしまった
頑張らせると逆効果 「もっと伸ばして」と声をかけるほど、力が入って曲がってしまう

これらは決して偶然ではありません。脳が損傷を受けると、赤ちゃんの頃にしか出ないはずの「原始反射」が再び顔を出すという、脳の仕組みそのものに理由があります。この仕組みを知らずに触れると、良かれと思った施術が、かえって緊張を強めてしまうのです。

2.原因:脳の仕組みと「原始反射」を知らないと起きること

大脳は「抑える」役割を持っている

生き物は、大脳が発達しているほど衝動を抑える力があります。犬が「待て」をできるのは大脳がしっかり働いている証拠です。人間の赤ちゃんは、生まれてすぐは大脳をほとんど使わず、生命維持を担う脳の奥深くの部分だけで生きています。成長とともに大脳が発達し、赤ちゃんの頃だけ見られる反射は自然と姿を消していきます。

ワンポイント: 脳梗塞などで大脳が損傷すると、この「抑える力」が弱まり、本来は消えているはずの赤ちゃんの反射が再び出てくることがあります。

知っておきたい代表的な原始反射

反射の名前 起きること
把握反射 手のひらを刺激されると、ぎゅっと握り返してしまう
非対称性緊張性頸反射 顔を向けた側の手足は伸びやすく、反対側は曲がりやすくなる
対称性緊張性頸反射 首を上げると腕が伸び、下げると腕が曲がりやすくなる
立ち直り反応の消失 体を傾けても頭が水平に戻らず、転倒のリスクが高まる

たとえば、麻痺のある手を無理やり開かせようとして上から握り込むと、赤ちゃんが手のひらを刺激されて握り返すのと同じ反応が起き、むしろ強く握られてしまいます。逆に、手のひらを下から軽く押し返すような刺激を与えると、自然と指が開きやすくなります。触れ方ひとつで、結果はまったく変わるのです。

「頑張って」が逆効果になる理由

麻痺のある手足に「もっと伸ばして」「もっと頑張って」と声をかけると、命令した方向とは逆に力が入ってしまうことがあります。これは、本人のやる気の問題ではなく、脳の損傷によって過剰な緊張が起こりやすくなっているためです。がんばらせるほど固くなるという事実を知らずに指導すると、施術者とご利用者様の双方が消耗してしまいます。

問いかけ:あなたの現場でこんなことはありませんか

  • 麻痺側にいきなり触れて、ご利用者様がびくっと驚かれたことがある
  • 「もっと動かして」と励ましたら、かえって力んでしまった
  • ご家族が良かれと思って、テレビの位置や声かけの向きを固定している
  • 片麻痺の左右で、対応の仕方を変えたことがない

3.対策:今日から実践できる4つのポイント

対策1.健側から触れて、安心をつくる

訪問時にいきなり麻痺側から触れると、ご利用者様は驚き、身構えてしまいます。まずは健側にご挨拶するように優しく触れ、「よく頑張っていますね」と労いながらリラックスしていただくことが先決です。安心してから麻痺側に移ると、施術後に反対側が固くなるという現象も起きにくくなります。

対策2.握るより「圧迫」で緊張をゆるめる

硬く握られた手には、無理に開かせようとするのではなく、母指の付け根をゆっくりと持続的に圧迫してみてください。筋肉の腱にあるセンサーが働き、力が抜けて自然と指が開きやすくなります。「引き離す」のではなく「圧をかけて待つ」という感覚が大切です。

対策3.手を体の中心で組んでもらう

施術の前後に、ご利用者様ご自身の両手を体の真ん中で組んでいただくと、左右の緊張のアンバランスが落ち着きやすくなります。手のひらへの刺激は脳への影響が大きいため、簡単でありながら効果を感じやすい方法です。

対策4.生活環境を見直し、意欲を引き出す

テレビや家具の配置によって、首が常に同じ方向を向いていると、片側の緊張を強め続けてしまうことがあります。位置を少し変えるだけでもリハビリになります。また、リハビリは見て真似るだけでは定着しません。回数を数えていただく、理由を説明してから行っていただくなど、ご自身で理解して取り組む工夫が習得への近道です。ちょっとした役割をお願いすることも、意欲を引き出す助けになります。

ワンポイント: 脳の損傷は左右で症状の出方が異なります。手足の麻痺が強く出やすい側もあれば、体の傾きに気づきにくくなる側もあります。決めつけず、お一人おひとりの様子をよく観察してから触れ方を選ぶことが、プロとしての第一歩です。

4.まとめ:本講義の重要ポイント3

No. 重要ポイント
1 大脳の損傷は、赤ちゃんの頃の反射を呼び覚ます。触れ方ひとつで緊張を強めることも、和らげることもできる。
2 脳の損傷部位によって、出やすい症状はまったく異なる。決めつけずに、まず観察してから触れる。
3 「頑張らせる」より「健側から安心をつくり、患側へ進む」流れが、結果につながりやすい。

学びの振り返りメモ

  • 今日から、施術は必ず健側から始めてみる
  • 麻痺側の手には、握るのではなく圧迫でアプローチしてみる
  • ご利用者様の左右の症状の違いを、次回の訪問で観察してみる

チェック練習表

確認 実践項目
□ 触れる前に、麻痺側かどうかを確認した
□ 健側から順番にアプローチした
□ 握らせるのではなく、圧迫でゆるめる方法を試した
□ 「頑張って」という声かけを控えた
□ 生活環境(テレビや家具の向きなど)を確認した

目標再確認シート

項目 内容
今の課題  
次回試すこと  
1か月後の目標  

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