【ケーススタディー C009】「もう立つことなんて無理だ」と言っていた102歳が、なぜ挑戦を始めたのか

「もう立つことなんて無理だ」と言っていた102歳が、なぜ挑戦を始めたのか|ALSOKケアプラス ケーススタディー
ケーススタディー C009

実際の訪問マッサージ症例をもとに、施術師が現場で何を見て、何に迷い、どう判断したかを記録したケーススタディーです。

「もう立つことなんて無理だ」と言っていた102歳が、なぜ挑戦を始めたのか

Before/After:起き上がり・立ち上がりの変化

施術の技術に自信があっても、触れることを拒まれてしまえば、その技術は届きません。 今日は、女性を希望され、拒否傾向もあったという102歳の方を引き継いだ施術師の記録をもとに、「技術より先に、何を聴くかを選んだ理由」をお伝えします。

ご利用者情報

年代・性別100歳以上・女性 | 住居施設入所
既往歴・現病歴
  • 左大腿骨頚部骨折
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 廃用症候群

ほぼ毎日、訪問診療を受けながら施設で生活されています。

車椅子に座り身を固くしているTさん

きっかけ:転倒を重ね、起き上がることも難しくなったTさん

Tさんは、施設に入居した当初はご自身で歩くことができていました。けれど自室での転倒を繰り返すうち、歩くことも、端座位を保つことも、起き上がる動作そのものも難しくなっていきました。去年5月、担当を引き継ぐことになったとき、事前に共有されていたのは「女性を希望される」「拒否傾向がある」という情報でした。

ご本人様:痛みの箇所が多いため、疼痛の緩和とマッサージを希望
ケアマネジャー様:動作の際に軽介助が必要なため、起き上がり動作・端座位の安定を
ご家族様:長く元気でいてほしいので、身体状態の維持・向上を

この事例の核心:技術より先に、何を聴くかを選んだ理由

引き継いだ時点で分かっていたのは、「女性を希望される」「拒否傾向がある」ということだけでした。ここですぐに施術の技術的な組み立てに入ってよいものか、正直迷いました。どれだけ技術に自信があっても、拒まれてしまえば、そもそも身体に触れることさえできません。

最終的に選んだのは、前任の施術師、ケアマネジャー、ご家族、介護スタッフ、そしてご本人様自身から、何を求めていて、何が嫌なのかを一つひとつ丁寧に聴き取ることを、どの手技よりも先に行うという判断でした。

その結果からか、少しずつ気に入っていただけるようになり、訪問の回数も増えていきました。介入当初は、ニーズ通り疼痛緩和を目的としたマッサージを中心に、仰臥位・側臥位・座位でTさんが心地よいと感じられる施術とモビライゼーションを重ねました。

座位での肩関節マッサージ・可動域確認の場面

長年続いていた肩関節の痛みが、マッサージの継続によって寛解したことがひとつの転機になりました。「先生の手は魔法の手、神様だ」「先生の言うことはやってみよう」。そう言っていただけるようになり、そこから運動を取り入れる「102歳からの挑戦」が始まりました。

STEP 1
仰臥位
疼痛緩和のマッサージ
体幹・股関節周囲の運動
STEP 2
側臥位
疼痛緩和のマッサージ・モビライゼーション
STEP 3
座位
疼痛緩和のマッサージ
肩関節周囲の体操
静的バランス運動
股関節周囲・足関節周囲の運動
保持練習
STEP 4
立ち上がり
動作練習

運動を始めた当初、Tさんの口から出ていたのは「もう立つことなんて無理だ」という言葉でした。

チームで信頼が生まれた瞬間

今回の対応は、私一人の判断だけで進めたわけではありません。前任の施術師やケアマネジャー、ご家族、介護スタッフから聴き取った情報が、施術の土台になりました。改善が進むにつれて、その輪の中にいた方々それぞれから声をいただくようになりました。

ご利用者・ご家族・関係者の声

もともと運動が好きだったこともあり、自身で動けなくなったことを思い詰めていましたが、疼痛が寛解し少しずつ身体が動くようになり、まさか立てるようになれてとても嬉しいです。(ご本人様より)

ご利用者・ご家族・関係者の声

トイレ・入浴・移乗動作の介助量が少なくなり、スタッフ側の身体的負担が少なくなりました。(介護スタッフ様より)

ご家族様からも「だんだん元気になり会話や笑顔が増えて嬉しい」、ケアマネジャー様からも「食事量や便通の改善もできて嬉しい」というお声をいただきました。身体の変化だけでなく、関わる全員にとっての変化になっていたのだと感じています。

数字で見る変化

支持物を使って立ち上がろうとするTさん
移乗動作
Before
5点
After
15点
見守りや介助を必要とせず、安定して移乗できるように
整容動作
Before
0点
After
5点
歩行動作
Before
0点
After
5点
支持物を使用しての立ち上がり・見守りでの動作が可能に
意欲評価(リハビリ・活動)
消極的意欲的
現在ではご自身でも居室内で一人で運動されるように
同施設の利用者数
3名6名に増加

表情が明るくなり、言葉数が増え、生活面でも前向きになっていきました。座位保持が安定し、見守りのもとでの立ち上がりが可能になり、ご本人様・ケアマネジャー様・ご家族様も非常に喜ばれていました。

まだ挑戦は続いている

疼痛が軽減したことで施術への安心感が生まれ、そこから活動への意欲が上がり、運動習慣そのものが定着していきました。今後は、ニーズの把握をさらに意識しながら、得られた情報をケアマネジャーや関係職種と積極的に共有し、多職種で連携しながら進めていきたいと思っています。

「まさか本当に立てるようになるとは思わなかった」。今、Tさんはそう言いながら、居室の中で一人、運動を続けています。

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【掲載事例について】本掲載事例は実際の利用者様の事例をもとに作成しています。個人情報保護のため、画像・氏名・その他個人を特定できる情報はAI加工および匿名化処理を行っています。
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