【ケーススタディー C011】 誤嚥予防と歩行改善、同時に狙う ― パーキンソン様症状のある方への25分に、何を詰め込んだか

誤嚥予防と歩行改善、同時に狙う施術|ALSOKケアプラス採用ブログ
ケーススタディー C011

実際の訪問マッサージ症例をもとに、施術師が現場で何を見て、何に迷い、どう判断したかを記録したケーススタディーです。

誤嚥予防と歩行改善、同時に狙う ― パーキンソン様症状のある方への25分に、何を詰め込んだか

在宅・施設への訪問マッサージは、基本的に一人で現場に向かい、その場で判断し、その場で技術を組み立てる仕事です。 今日は、大阪のある施設で担当した一つの症例をもとに、「限られた25分の中で、何を優先し、なぜその手技を選んだのか」をお伝えします。

ご利用者情報

年代・性別80代・男性 | 住居施設入所
既往歴・現病歴
  • アルツハイマー型認知症
  • ラクナ梗塞
  • てんかん発作
歩行器での誘導も難しかったKさん(Before)

Before:歩行器の誘導すら難しい状態から

診断名としてはついていないものの、パーキンソン病のような症状があり、身体の強張りが強く、歩行器での誘導すらできなくなっていたところからのスタートです。

ご家族様:「体力が低下しないようにしてほしい」
ケアマネジャー:「以前のように歩行できるようにしてほしい」

ADL低下予防を目的に、ケアマネジャーを通じてご依頼をいただきました。意思疎通や指示動作も難しい状態で、正直、最初の訪問時点では「どこまで負荷をかけて良いものか」という迷いがありました。

この事例の核心:なぜ、あえて「攻めながら守る」プランを組んだのか

Kさんには、大きく分けて2つの課題が同時にありました。ひとつは身体の強張りによる歩行・起立の困難。もうひとつは、誤嚥・むせこみのリスクです。 意思疎通が難しい方に対して、通常であれば「まずは様子を見る」という判断もあり得ます。しかし私は、初期の段階からあえて座位・立位・歩行練習という負荷の高い運動を取り入れることにしました。

理由は、診断名こそついていないものの、パーキンソン病と重なる症状が明確に見られたためです。頸部が前屈しやすい姿勢に対しては対象筋を狙ったストレッチを行い、同時に、誤嚥対策の研修で学んだシルベスター法・シャキアエクササイズ・発声練習を積極的に組み込みました。単に「歩けるようにする」ことだけを目指すのではなく、「動かすことで誤嚥性肺炎のリスクも同時に下げる」という、ふたつの目的を1つの施術プランの中に組み込む必要があったのです。

痰やとろみ剤でむせこんでいる様子があったため、タッピングとうがいを取り入れ、喀出しやすい状態を作ることも並行して行いました。意思疎通が噛み合わなくても、対話を心がけてお話しいただくことを意識し続けました。

仰臥位での施術の様子

実際に組み立てた流れは、以下の通りです。

STEP 1
仰臥位
ハムストレッチ
腰ひねり
大胸筋リリース
シャキアエクササイズ
シルベスター法
STEP 2
側臥位
肩甲骨周りリラクゼーション
大胸筋ストレッチ
腸腰筋ストレッチ
STEP 3
座位
舌骨上・下筋群のマッサージ
手すりでの起立着座訓練
STEP 4
歩行
歩行器での廊下歩行練習

チームで信頼が生まれた瞬間

訪問マッサージは一人で現場に向かう仕事ですが、決して一人だけで完結する仕事ではありません。今回の症例でも、ケアマネジャーや施設の看護師との情報共有、状況報告、目標のすり合わせが、施術の効果を支えてくれました。

ご利用者・ご家族・関係者の声

無意欲・無表情だったあのKさんが喋っている、手を振り返してくれることに感動しました。スタッフ不足から行き届いていない口腔ケアまで取り組んでいただき、非常に助かっています。(ケアマネジャー様より)

ご利用者・ご家族・関係者の声

歩行できているKさんを見れて嬉しく思います。度々熱発がありますが、入院に至っていないのは普段からの機能訓練の賜物だと思います。(施設看護師様より)

施術の様子を可視化し、状況報告と目標のすり合わせを重ねたことで、ケアマネジャーからも心身両面での評価をいただけました。一人で抱え込むのではなく、施設スタッフとの連携を前提にプランを組み立てる姿勢が、結果として信頼につながっています。

数字で見る変化

笑顔で会話しながら歩行できるようになったKさん(After)
歩行動作
Before
0点
After
5点
歩行器の誘導さえ難しかった状態から、突進歩行・膝折れが減り、質・量ともに安定した歩行へ
移乗動作
Before
5点
After
10点
手引きでの立ち上がりにおける介助量が減少
食事動作
Before
5点
After
10点
ADL評価上、最も明確な自立化が見られた項目
意欲評価(意思疎通)
消極的促しに応じる
意欲評価(食事)
促しが必要意欲的
この施設全体の利用者数
4名20名に増加

歩行時の膝崩れが減って歩行距離が伸びただけでなく、便失禁について「時折出ている」とご本人が自ら口にされる場面が増えたことも印象的でした。これは身体感覚への気づきと、それを言葉にする意欲の両方が戻ってきている証拠だと捉えています。問いかけへの反応だけでなく、発語や笑顔も増えてきました。

この症例から、もっと突き詰めたいと思ったこと

25分という限られた時間の中で、何を優先し、どこまでプランを組み立てられるか。今回の症例を通して、その判断力の重要性を改めて実感しました。誤嚥予防と身体機能の両方を同時に狙うプランは、優先順位のつけ方ひとつで結果が変わります。次はさらに検証を重ね、より根拠を持って組み立てられるようにしたいと思っています。

また、施術師の力だけでは限界があることも実感した症例でした。信頼される施術・接遇、そして将来のビジョンを伝えることで、医療・介護チームとして同じゴールを目指す。その重要性を再認識できたのも、この症例から得た大きな学びです。今後は新規エリアの担当として、こうした信頼関係を築ける施設をさらに増やし、より多くの利用者様に貢献していきたいと考えています。

ケアプラスで働くと、施術師として成長できる。

私たちが大切にしているのは、雰囲気の良さや制度の充実だけではありません。

社内セミナー・症例検討会を通じて、根拠を持って施術を組み立てられる施術師を育てる環境があります。

【掲載事例について】本掲載事例は実際の利用者様の事例をもとに作成しています。個人情報保護のため、画像・氏名・その他個人を特定できる情報はAI加工および匿名化処理を行っています。
施術・セミナー動画観覧ご希望の方へ

ALSOKケアプラスでは、セミナー受講者向けの施術プログラムを中心に、実践的な学びを提供しています。WEBセミナーの参加施術・セミナー動画の観覧は、弊社とご契約いただいた方限定となります。

● 新たに契約をご希望の方

ALSOKケアプラスのセミナーは無料で受講可能です。まずは下記のバナーからご確認ください。

0円で受けられるWebセミナー案内
● ご契約者様

過去のセミナー動画や資料は、配信メールに記載の「WEBセミナーお申込みフォーム」から閲覧登録が可能です。

最後までご観覧いただき、ありがとうございました。

ALSOKケアプラスのセミナー活動が、皆さまの学びと現場の支援に少しでもお役立ていただけましたら幸いです。今後も定期的に最新のセミナーレポートを公開してまいります。