【ケーススタディー C025】 体力が落ちていく中で、なぜ運動を止めない選択をしたのか
実際の訪問マッサージ症例をもとに、施術師が現場で何を見て、何に迷い、どう判断したかを記録したケーススタディーです。
体力が落ちていく中で、なぜ運動を止めない選択をしたのか
症例が必ずしも右肩上がりに改善するとは限りません。持病がいくつも重なり、入院を経て、体力が落ちていく中で担当することになった方もいます。 今日は、そうした一件を担当した施術師の記録をもとに、「良くなる保証がない中で、何を見て、何に迷い、なぜ運動を続ける判断をしたのか」をお伝えします。
ご利用者情報
- 腰椎圧迫骨折(既往)
- 認知症
- パーキンソン病
- 糖尿病
再開の依頼:良くなる、ではなく「維持したい」という要望
もともとは別の担当者がサービスに入っていましたが、圧迫骨折で入院し、長期間サービスが途切れていました。再開にあたり、改めて無料体験を実施することになったのが、今回の症例です。
ご家族様・ケアマネジャー様:「館内での歩行能力の維持と、関節可動域の向上をお願いしたい」
「改善してほしい」ではなく「維持してほしい」という言葉から依頼が始まったのは、今回が初めてではありません。ですが、認知症・パーキンソン病・糖尿病という組み合わせは、それぞれが互いに影響し合い、体力低下のスピードを予測しづらくします。何を目標に置くべきか、正直、最初の訪問だけでは決めきれませんでした。
この事例の核心:良くならない前提で、それでも運動を止めなかった理由
昨年10月に訪問を始めた時点で、Mさんは手引き歩行の状態でした。12月には見守りの下でシルバーカーを使い、自室と食堂を歩行できるようになり、時折は壁伝いで自らトイレに向かう場面も見られるようになっていました。ここまでは、素直に良い経過だったと思います。
ところが年明けの1月中旬、体調不良をきっかけに体力が落ち始めます。3月には手引き歩行に戻り、5月からは体幹を支えながらの歩行介助が必要になりました。自発的な行動も弱くなり、関節可動域の制限も出始めていました。ここで正直、迷いがありました。運動の負荷を上げれば、糖尿病やパーキンソン病を抱える身体にとってオーバーワークになるのではないか。かといって負荷を落とせば、このまま動きを覚えている力そのものが失われていくのではないか。どちらに転んでもおかしくない状態でした。
最終的に判断したのは、運動をやめることではなく、負荷のかけ方の順番を変えることでした。まずは他動運動で関節を動かし、次に自動介助運動、そしてチューブやボールを使った運動へと、段階を踏んで強度を上げていく。フォームが多少崩れていても構わないので、「まだ体は動かせる」ということを、身体自身に覚え直してもらうことを優先しました。
実際に組み立てた流れは、以下の通りです。
筋力トレーニングは10回1セットを目安に、廊下の歩行は往復約30メートルを1周2セットまで。数字を決めておくことで、その場の頑張りに引っ張られてオーバーワークにならないよう、歯止めをかけています。どこの筋肉に効いているかをそのつど説明し、何ができていたかを伝えることも欠かしていません。認知症があっても、少しでも運動そのものに興味を持ってもらえたらという思いからです。
チームで信頼が生まれた瞬間
Mさんが手引き歩行から、見守りの下でのシルバーカー歩行になれたこと。壁伝いに自分でトイレへ向かう場面が時折見られるようになったこと。館内の食事量が増えたこと。この3つは、私だけの手柄ではありません。
シルバーカー歩行になったことで、介護の負担が減少しました。(ケアマネジャー様・館内職員様より)
現場のスタッフが日々の様子を共有してくれるからこそ、施術の方向性を微調整できています。一人で訪問する仕事ですが、判断材料は現場からもらっている、という感覚があります。
数字で見る変化
この症例から、まだ答えが出ていないこと
正しいフォームである必要はなく、体にはまだ動く必要があると覚え込ませること。運動強度は他動運動から自動介助運動、チューブやボールを使う運動へと順番に上げていくが、オーバーワークにはしないこと。この2つのバランスを、Mさんの状態を見ながら毎回微調整しています。
正直なところ、次にまた体調を崩したときにどこまで運動を落とすべきか、まだ自分の中で答えが出ていません。落としすぎれば動きを覚えている力を失い、落とさなすぎればオーバーワークになる。次の訪問でも、Mさんの表情と関節の動きを見ながら、その場で決めることになると思います。
ケアプラスで働くと、施術師として成長できる。
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