20200730-03 「廃用症候群と誤嚥性肺炎」
今回の講義内容:「廃用症候群と誤嚥性肺炎」 2020年7月30日
講師:㈱ケアプラス テクニカルアドバイザー 言語聴覚士 Ms.S
言語聴覚士講師によるWEBセミナー開催で、大勢の方に参加いただき充実した会となりました。
ご参加の皆様、「誤嚥対策WEBセミナー」を熱心に受講していただき、誠にありがとうございました。
S先生、とても分かり易いご講義をありがとうございました。
セミナーの概要については以下をご参照ください。
目次
1 皆さんの嚥下機能の検査をします!
2 RSST(反復唾液嚥下テスト)
3 講義のテーマ
4 前半:基礎知識
5 1.コロナ禍における廃用症候群と嚥下障害の関連性
6 摂食嚥下障害の二つのタイプ 1
7 摂食嚥下障害の二つのタイプ 2
8 摂食嚥下障害の原因は?
9 嚥下運動に関わる筋
10 高齢者の筋肉量の低下
11 安静臥床による筋力の低下
12 2.誤嚥性肺炎になりやすそうな人
13 誤嚥性肺炎になりやすそうな人詳細とは
14 ①痩せている ➡ 低栄養,サルコペニア
15 サルコペニアの判断基準
16 どうしたらわかるの?
17 3.評価のポイント
18 嚥下何期に問題があるか?
19 RSST(反復唾液嚥下テスト)
20 理想的な食事の姿勢
21 頭部伸展位の影響
22 ■頚部の筋緊張が高い
23 ■ 声
24 ■ 呼吸機能・咳嗽力
25 4.嚥下に関する基礎知識
26 ■誤嚥したらどんな症状がでますか?
27 ■嚥下の仕組み
28 正常な嚥下 ⇒ 3つの蓋が閉じます
29 ■誤嚥と誤嚥性肺炎
30 気管侵入=肺炎にならない仕組み
31 ■摂食嚥下5期モデルとは
32 摂食嚥下⑤期モデル
33 ■問題別対策とアプローチ
34 ①食べる前(認知期)に問題がある方への対応
35 ②口の中(準備期・口腔期)に問題があると・・・?
36 ②口の中(準備期・口腔期)に問題がある方への対応
37 ③のどの中(咽頭期)に問題があると・・・?
38 ③のどの中(咽頭期)に問題があるかたへの対応
39 誤嚥性肺炎クイズ(前回実施)
40 質問①
41 質問②
42 質問③
43 質問④
44 質問⑤
45 前回出た質問について
46 後半:実践編
47 A 姿勢の評価と取り組み
48 ■不良姿勢の影響
49 嚥下機能をアップするのは難しい・・・
50 嚥下の土台にアプローチしよう!
51 「起立-着席運動」のススメ
52 なぜ「起立-着席訓練」で嚥下改善?
53 「起立-着席運動」のやり方
54 「起立-着席運動」の効果
55 B 呼吸の評価と取り組み
56 ■呼吸機能評価
57 口すぼめ呼吸
58 咳嗽訓練
59 シルベスター法
60 体軸(体幹)捻転法
61 C 発声の評価と取り組み
62 声
63 嚥下体操
64 嚥下体操 ②
65 嚥下体操 ③
66 嚥下体操 ④
67 その他嚥下機能低下を防ぐ練習(アプローチ方法)
39 誤嚥性肺炎クイズ(前回実施)
誤嚥すると高齢者は誤嚥性肺炎になる? YES・NO・その他
誤嚥とは食べ物が肺に入ることである YES・NO・その他
誤嚥するとムセる YES・NO・その他
好きな食べ物は誤嚥しづらい YES・NO・その他
口から食べなければ誤嚥性肺炎にならない YES・NO・その他
40 質問①
質問:誤嚥すると高齢者は誤嚥性肺炎になる? YES・NO・その他
誤嚥≠誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎⇒食べ物や細菌だらけの唾液などを誤嚥することで発症
侵襲と防御のバランスが重要です
誤嚥してもしっかりムセて(咳嗽して)
喀出できれば大丈夫!
41 質問②
質問:誤嚥とは食べ物が肺に入ることである YES・NO・その他
食べ物や飲み物だけではありません
汚染された唾液や胃・食道から逆流して誤嚥する場合もあります
42 質問③
質問:誤嚥するとムセる YES・NO・その他
ムセのない不顕性誤嚥があります
夜間に唾液をムセずに誤嚥することで
誤嚥性肺炎を発症することもあります
43 質問④
質問:好きな食べ物は誤嚥しづらい YES・NO・その他
食事と嚥下することをしっかり意識することで誤嚥せずに食べられることもあります
嚥下認知期に作用しています
しっかり注意して食べることが重要なんですね
44 質問⑤
質問:口から食べなければ誤嚥性肺炎にならない YES・NO・その他
非経口の栄養方法(胃ろう・経鼻経管栄養・末梢静脈栄養 等)
でも誤嚥性肺炎になる可能性はあります
また就寝時に唾液を誤嚥することでも誤嚥性肺炎になります
就寝前と起床時の口腔内のケアは大変重要です
45 前回出た質問について
①脳梗塞の方で麻痺側の流涎に対して口唇閉鎖の訓練以外にアプローチを教えていただけませんか。
→流涎対策について
麻痺による口唇の閉鎖や頬の筋緊張が不十分なため方へのアプローチとして、
口唇周囲のマッサージが有効とされています。
嚥下体操に追加し、頬➡口唇とマッサージしていきます。
※「バンゲード法」で検索してみてください。
②認知がある方への嚥下機能練習はどのように行っているのでしょうか?
具体的な例でお答えいただけら幸いです。
→認知機能の低下がある方へのアプローチ法
訓練練習内容の目的を考えることが大事だと思います。
他動的に実施できないかまたは他の練習で代用できないかを考えてみましょう。
例えば嚥下体操の一部(×口腔顔面運動)は他動的に実施も可能です。
パタカラの真似ができなくても、他に発声を促す方法がないかを考えます。
例えば歌を一緒に歌ってみるのもいいと思います。
他にもシルベスター法や体軸捻転は認知機能の低下のある方でも実施可能です。
③細菌なら負けるというのはわかるのですが、食べ物に白血球が負けるというのはどういう現象ですか?
また、唾液が誤嚥性肺炎の原因になるのがよくわかりません。
やはりこれも唾液についた細菌が原因ですか?
→
・ちょっと説明が長くなってしまったため、次回の講習会でも説明いたしますね。
・誤嚥性肺炎は①食べ物や飲み物②汚染された唾液などが肺に侵入することで肺に炎症が生じます。
肺に炎症が起こる、すなわち「肺炎」です。
・炎症が起こる理由は、肺に侵入した①や②が細菌=異物として捉えられるためです。
白血球(マクロファージ・単球・好中球など)が異物を退治するために肺に集まります。
そのため炎症が起こります。いわゆる自然免疫です。
・健常者も食べ物を誤嚥することも、夜間の唾液誤嚥することもあります。
でも肺炎にならない理由は、自然免疫が機能して白血球が、誤嚥物を異物=細菌として除去している
からです。
もちろん誤嚥する量が多ければ若い方でも誤嚥性肺炎になります。
この侵襲(誤嚥する量)と防御(自然免疫)のバランスで侵襲が多ければ肺炎になります。
ではなぜ高齢者は肺炎になりやすいのでしょうか?慢性的な誤嚥及び自然免疫の機能低下により侵襲
が勝るからです。
「白血球が負ける」とは、自然免疫の機能低下により侵襲が勝っていることを端的に表現しています。
・高齢者の誤嚥性肺炎の発症の原因の一つとして、夜間の唾液の不顕性誤嚥が上げられます。
口腔ケアをしていない唾液はかなり汚染されていると考えてください。
・口腔ケアは、誤嚥性肺炎の防御にも治療としても機能します。
口腔内が不潔な状態だと細菌は増殖を続け、ウイルスなどがどんどん体内の細胞内に送り込まれること
になります。
④口腔内の乾燥のチェックは特にどの辺りをチェックすれば良いでしょうか。
わかりやすいのは舌だと思います。下記の口腔内の評価の3つのポイントを参照ください。
【口腔内の観察の3つのポイント】
1)乾燥があるかないか? ある・なし
2)汚染があるかないか? ある・なし
(口腔内や義歯)
3)舌苔があるかないか? ある・なし
・その他
異常がないか? 潰瘍、炎症など
⑤嚥下5期で、どこが障害されているのかを見定めるのが重要とのことですが、
我々マッサージ師が施術時に見定める方法はあるのでしょうか。
→実際には食事場面の観察しないとどこが障害されているかはわかりません。
食べずに評価するとなると問診シートの「質問シート」が有効だと思います。
嚥下5期のどこに低下の可能性があるかを記載しています。
全てを説明するのは困難なため、例えば②準備期と③口腔期の低下の原因として以下のようなものが
上げられます。
原因)義歯が合わない、義歯の不使用など
口腔内に麻痺があるなど
⑥よく施設等で食事前に行われている口腔体操の「パタカラ運動」や「あーべぇ運動」は
先程お話のあった5期のどのあたりの方に有効でしょうか。
→①認知期②準備期と③口腔期に有効です。
なぜかわかりますか?
こちらは、次回の講習会で改めて説明しますね。
⑦在宅の患者さんで食事や水分補給を嫌がる方に対して、どの様な対応・指導を行えばよいでしょうか。
→まずは食欲不振の原因を探ってみましょう。
(便秘・運動活動不足・消化管疾患などはありませんか?)
栄養を取らないと、脱水や免疫力の低下を招き様々な病気を引き起こしやすくなることを説明する。
ご利用者さんの好みの食事を提供する。
少量で栄養が保持できるたんぱくゼリーやドリンクなど栄養補助食品を活用するなど。
⑧間接的機能維持の為の、口腔等の運動がありましたら、教えて下さい。
→口腔顔面運動、発声練習、顔面マッサージなどがあります。
嚥下体操は汎用性がありよく利用されています。
次回の講習で実際にやってみますね。
⑨誤嚥性障害ののちに胃瘻になる患者さんがいたりします。胃瘻造設するのは、世界でも日本だけだと
聞いたことがあります。あとの国はどうしているのでしょうか?
→胃ろう以外の非経口の栄養摂取法(人口栄養)はいろいろあります。
経鼻経管栄養、中心静脈栄養、末梢静脈栄養 など
日本以外の外国の事情については詳しくないのですが、
経口から食べられない時点で身体的な機能低下が考えられるため
点滴での栄養投与や胃ろうは選択肢のなかにはそもそもないような印象があります。
⑩嚥下障害ある方に、しっかり目を開けて食事するようにと、よく看護師さんが言っていますが、
それは認知、食べる準備のためですか?
→その通りです!しっかり五感(見る・嗅ぐ・触るなど)に訴えることで食認知を促しています。
嚥下認知期は嚥下5期の入口ですからとても大事です。
また、嚥下認知期の低下の具体例としては、
食べる意欲がない(食欲不振)や、意識レベルの低下、食物の認知が困難などがあります。
これから暑くなると、高齢者の方はますます食欲不振や
摂取量の低下する可能性があります。
⑪世界的にどこの国が嚥下に関するリハビリが活発に行われていますか?
STのリハが進んでいる国は日本以外にもありますか?
→STの役割は国によって異なります。
残念ながら詳細については私はわかりませんが、
日本でSTが嚥下障害に関わるようになったのも比較的最近のことです。
欧米は嚥下に関する研究は進んでいる印象があります。
ですが日本はアジアの中ではトップクラスだと思います。
逆に月川さんがどうしてこの質問をされたのかが気になります(^^)
46 後半:実践編
「食べずに」嚥下機能の評価をしよう!
嚥下評価の視点...姿勢と呼吸と発声が重要です!
A 姿勢の評価と取り組み
B 呼吸の評価と取り組み
C 発声の評価と取り組み
49 嚥下機能をアップするのは難しい・・・
嚥下間接訓練(飲食物を用いない)
嚥下訓練の有用性に関するエビデンスの高い研究は多くないのが現状「嚥下障害診療ガイドライン2015」
↓
ちょっとくらいムセても・・・
「誤嚥に負けない土台づくり」
①下肢・体幹へのアプローチ
②咳嗽力を鍛える(呼吸療法)
50 嚥下の土台にアプローチしよう!
①下肢肢・体幹へのアプローチ
" 誤嚥性肺炎の治療や予防を考える上で、
下肢を中心とした全身の筋力の維持・改善は、口腔へのアプローチに勝るとも劣らない"
2018 小野木 宏彰 メディカ出版『誤嚥に負けない体をつくる間接訓練ガイドブック』より
" 足腰が鍛えられ体力がつけば、嚥下機能もおのずと回復してくる"
2017 三好 正堂 現代書林『新版 間違いだらけのリハビリテーション』より
52
なぜ「起立‐着席訓練」で嚥下改善?
・健側を強化による「体力の改善」
従来のリハビり →麻痺側の治療に時間かける
健側の廃用が進行しやすい
下肢運動の不足
三好先生のリハビリ→起立着席訓練は全身運動
健側・麻痺側いずれにもアプローチ
・体力・気力の回復
・経管栄養や胃ろうで必要な栄養を保持
↓ 対策
よく寝て
嚥下や呼吸機能の改善 よく食べて
よく運動する
2017 三好正堂 現代書林『新版 間違いだらけのリハビリテーション』より
53 起立-着席運動」のやり方
①まず、椅子に座って前の手すりを持ちます
②身体を前方に傾け、両側下肢に均等に体重をのせます
片麻痺の場合は非麻痺側下肢に体重をのせます
そして「いち、にー、さんー、しー、ごー」と言いながら
3~5秒かけてゆっくりと立ち上がります
③立ち上がったらすぐに、
また「いち、にー、さんー、しー、ごー」と言いながら
3~5秒かけてゆっくりと座ります
これを繰り返します
問題点の考察、機能評価、能力評価の方法、治療の方針と対策など
ケアプラスではより良質な訪問医療マッサージサービスが地域・社会に提供できるよう目指しております。